あまりの痛みに勢いよく振り返れば大きなバイクが数台、あたしの後ろで停車している事に今更気付いた。バイクから飛び降りたらしい翼の一発が今まさに振り落とされた所だったようで。
慌てて停車していたバイクの前から左端に避けると遅れて最後、たどり着いたバイクの一台があたしの前に滑り込んできた。
「うおおおおっ!」
轢かれそうな勢いで滑り込んだバイクは横倒しに投げ出され、その上からヒラリと飛び降りた優があたしの前に見事に着地。けれどバイクは横倒しに倒れたまま、タイヤが文句でも言いたそうにくるくると回転していた。
見れば停車していたバイクには翼だけでは無く空や隼人くん、他のヤンキーズも数人居た。どうやら皆、慌てて駆けつけてくれたらしい。
「愛理ちゃん怪我は!?」
「平気だよ…来てくれたんだ。」
「アホやろほんま。」
あたしの腕を掴み引き寄せた優の顔を見て肩の力が抜ける。自分でも気づかぬうちに緊張していたらしい。今更ながら怖かった、そう思う。
「おい、その傷どうした」
翼があたしの左頬を見て言う。一瞬忘れていた痛みが戻ってきた。もしかしたら赤く腫れているのかもしれない。
片手でそこを押さえ緩く頭を振る。
「転んだ。」
「嘘つくんじゃねえよ。」
「いやいや、あはは」
「笑い事じゃねえだろ!」
ペシン、翼に今度は額を軽く叩かれる。ちょっとちょっと、叩きすぎじゃなかろうか、言い返してやろうとしたけれど、その前に翼の片手があたしの左頬を優しく撫でたから何も言えなくなった。
「愛理さんは…あたしが襲われてた所を助けに来てくれたんです」
探るような瞳を優と翼に向けられていたあたしに助け舟。トシの彼女がおずおずとあたしの横に立ち、代弁してくれた。