「おい足押さえろ。暴れられたら面倒だからな」
5人が彼女に群がって何かをしている。あの黒髪の男は壁に寄りかかってそれを楽しそうに見つめているだけだった。にやにやにたにた、あの笑みで。
最低だ。女を物みたいに扱うこいつらに頭がくる。
何してんだ、いったい何をやってんだ。
「何してんの」
あたしから出た声は自分でもびっくりするくらい冷たい声だった。
まさか別の人間がこの場にやってくると思ってもみなかったのだろう、群がっていた男達が次々に顔を上げてあたしを視線で捕らえた。
あの黒髪の男と視線が絡む。鋭い目で探るように睨めつけられるが怖いとは思わなかった。頭にきて、それどころじゃない。
「誰だお前」
「その子の友達。」
優達の知り合い、と言うよりもその子の友達と言った方はこの場は良さそうだ。
考える事も無く口をついて出た言葉を放ったけど、後々考えたら良くやった自分と褒めたたえたい。
彼女は体を両手で押さえガタガタと震えてる。5人はあたしと黒髪の男を交互に見てさてどうしようか、指示でも待っているみたいに大人しくなった。這い回っていた手も今だけはピタリと停止してる。
「その子帰してくれない?」
「お前、北原の誰かの彼女か?」
「何だそれ。そうじゃなくてその子の友達だって言ってるんだ!その子、帰して」
話にならない本当に。それにこのままじゃあたしもボロが出そう。何たって馬鹿だから。