「優っ、」



声が震える。早く行かなければ、トシの彼女があたしの視線の先から消えた事に気持ちが焦って仕方ない。



優は一瞬でそれに気づいたらしく周りの人達に「静かにしろや。」一言で言い聞かせ押し黙らせる『何があったん?』優しい声色で言葉を促した。



けれど、あたしの言葉を塞ぐようなタイミングで。



「いやぁっ!誰かっ、助けて!」



トシの彼女の悲鳴が聞こえてきた。


ハっとしてまた右の道に視線を向ける。そこには既に彼女は居らず、どうやらもう一本折れた道からその声は聞こえてきてるらしい。まずい。




「っ、トシの彼女が東の奴らに連れさらわれそうなのっ。場所はーーー」




こういう時はごちゃごちゃと説明を言うより用件と場所を言うのが一番いい。あたしは場所説明だけをして優の声を無視し電話を切った。



ポケットにつっこんだ携帯がまた振るえ出したけどそんなのもう構ってられなかった。



せめてトシの番号さえ知ってればすぐに駆けつけてくれたかもしれない。



電柱の裏から飛び出すようにして道へと駆け出す。躊躇う事なくもう一本折れた薄暗い道へと飛び込んだ。




折れた道はただの行き止まり。



端には青色の大きなゴミバケツが数個置いてある。もしかしたらゴミ捨て場として利用するのみの道なのかもしれない。



そのままどこかに連れ去ろうとしていたのかと思えば、行き止まりで薄暗い道、何をしようとしていたのかは一目瞭然。



考えただけで吐き気がする。