6人の中の5人は北原高校の皆と張り合えるくらいカラフルな髪をしている。だけどその中の1人は不良高校に通っているのに珍しい黒髪に黒縁眼鏡だった。
優に連絡したほうがいいだろうか。携帯を出そうか一瞬迷ったけど、もしもこれがただの誤解だったらもっとややこしいことになりそうだ。
トシ達は中で何かを買ったらしく、コンビニ袋をぶら下げて出てきた。携帯を握り締めてトシ達の後ろの6人組みを見つめるとやり合うつもりは無いのか電柱の前からは一歩も動かないでいた。
トシと彼女はこっちに楽しそうに話しながらやってきてあたしが居る脇道を通り過ぎ真っ直ぐ歩いて行ってしまう。それでも6人は動かないでただただ嫌な笑みを浮かべて去っていく二人を見つめていた。
だけどあの黒髪の男は何だか嫌な感じがする。
にやにやにたにた、これから起こる何かを楽しむみたいなーーーそんな笑みを浮かべて5人に何かを囁くように声をかけるとトシ達とは逆の方向に歩いて行った。
何だあいつ、女の直感的なものだろうか、このまま見逃してはいけない嫌な空気を察する。
ほってはおけない、勘違いならそれでいいんだ。あたしは買い物袋を持ったまま真っ直ぐ歩いて行ったトシと彼女を追いかけた。
優にはまだ連絡しないでおこう。向こうもきっと色々大変だ。それにトシならこの間喧嘩してたのを見ればそこそこの腕なんだろう。
もし喧嘩が始まったら彼女だけ安全な場所にうつせば何とかなる気がする。
早足で追いかければ二人はすぐに見えてきた。良く見ればあたしはまだ買い物袋をぶら下げたままで、ストーカー紛いな事までしてるけど ご近所さんに通報されないだろうか。
そしたら何て言い訳しようか。そんな下らない事を考えながら距離を開けて後を着けているとトシはポケットから携帯を取り出して耳にあてた。
どうやら連絡が入ったみたいだ。何やら携帯の向こう側の相手と深刻な話しをしているみたい。こりゃ呼び出しがかかったな。
あたしの予想はあたったらしい トシは彼女にペコペコ頭を下げて謝っている。
彼女さんは嫌な顔一つせず笑顔でひらひらとトシを見送ってから右の道に入っていった。