それは反則だ。身構えてもいなかったからある意味で大ダメージを食らったぞ。
心臓さん落ち着いてくれたまえ。今大暴れしてはいけない。どっくどっく暴れだした心臓に心の中で言い聞かせる。表面上だけは崩さないようにしたけれど、どうだろう、もしかしたらだらしない顔になっているのかもしれない。
「さささ、さっきの話だけど」
これ以上の沈黙は耐え切れない。話題を素早くさっきの話へと戻した。
「上の人が分からない事なんてあるんだね?」
「上手く隠してるんやろな、やから厄介。どこで誰が襲われるかも分からんし、襲われたからって上の人間に話しつけに行く事も出来んし。やから最近バタバタしとった」
「なるほど」
やっぱり理由がわかるだけでも気持ちが違うよ。それはそれで心配にもなるけども、何が起きてるかも分からず帰りが遅ければ色々考えてしまうものだよ。
「南が今調べてるんやけどなかなか尻尾掴めんから皆切羽詰っとんねん。愛理ちゃんのことは東にも西にもまだ知られてへんと思う。やけど一応気をつけてほしいねん」
「分かった。でも一つ質問があります。はーい」
「はいどうぞ愛理ちゃん」
「はい先生、こんな高級マンションにお住まいだけども。君はお坊ちゃま君なのかい?」
随分と前から気になっていた。一人で住むにしては広すぎるこの部屋。だから真剣にそう思っていたのだが、あたしの言葉を聞いた優は「はははははっ」声を上げて笑いだした。ちょっと待て、こっちは真剣だぞ。この目を見てくれ。