バシャバシャと叩きつけるような雨が降る。せっかく傘を差してきたのにこれじゃ意味がない。
差した傘だけでは受け止めきれなかった雨が髪を伝って服へと落ちる。濡れた服が重たくなっていく。肌にまとわり付く気持ち悪さに顔をしかめた所でふと顔を上げれば双子と出会った桜の木が見えた。
何となくそれすら懐かしく見える。ピンク色の花びらは跡形も無く消えていた。散った花びらっていったいどこにいくんだろう、そんな事を考える。足元にすら桜の花びらは落ちていない。
ここで呆然としていたらあの騒がしい声が聞こえてきたんだっけーーーーーそう思った矢先遠くからあの時と全く似た音が聞こえてくる。騒がしい声、駆ける音。
まさかまた翼と空が誰かを追いかけてるんじゃ?後ろを振り返ってみたけど誰もいない。
声のする方を探して勝手に足が動く。不思議な感覚だ。まだ遠い、まだもう少し遠い場所から聞こえてくる騒がしい声。それを追うようにしてフラリフラリと足を動かしていくと少しして路地裏に差し掛かった。
明らかに薄暗くて怪しい雰囲気だ。いつもなら絶対こんなところ行かない。だけどこの時は行かなければいけない気がした。
雨で濡れてしまったワンピースをぎゅっと片手で掴み、緊張しながらも路地裏の薄暗い中へと足を進めていく。水たまりを踏んだのかパンプスの下で水音が鳴った。
傘を打つ雨音。それに混ざって奥の方から声が聞こえてくる。
「お前ら誰に言われてこんな事してんだ」
雨音、何かを殴る異様な音。
奥の方から聞こえてきた声は聞いた事がある声だった。押し黙って声の主を思い出す、すぐに出てきたのは真っ赤な赤髪のトシだった。