……細い、細い、よく聞かないと消えてしまいそうな声。

「……誰?」

目の前の彼女が、首をこてっと傾けたのを見て、初めて自分に問いかけられているのだと気が付いた。

「今日、君の通ってる学校に転校してきた者だよ。
君の後ろの席なんだけど……気付いてなかったのかい?」

「後ろ?後ろに人なんかいたっけ……?」
 
少し眉間に皺を寄せて考え込んでる彼女は、ちょっと可愛い。

「ところで君。
君もバスを待ってるってことは、村の人間かい?」

「……君じゃない」

「……はあっ?」
 
突然、彼女が不機嫌になって僕を睨む。

「私は君、じゃない。
雪(すすぎ)ましろって名前がある」

「えっと、じゃあ、……雪さん」

「……ましろ」