「いや、いいんだ。でも、おかしいなぁ。ここに閉まったはずなんだけどな……おっ! あったぞ!」

 押し入れに身体の半分を突っ込んだお父さんの声が弾む。

 段ボールをぐいぐい引っ張っり出して、なかから出てきたのは盆提灯だ。

 お盆になると迎え火といって、先祖や亡くなった身内が迷わないようにこの提灯に火を灯すのだとか。

 
 「よかったよかった。これがないと困るからなぁ」

 汗を拭うお父さんは心底嬉しそうだ。

 「母さんが迷わないように出しておかないとな」


 わたしは盆提灯をじっと見つめた。

 
 ふと記憶が蘇る。

 同時に頬が強張っていくのが自分でわかった。

 それはやっぱり事故に遭う前のことで、お盆の夜、お父さんが泣きながらわたしに怒っている記憶。