死にたくないから生きている。どんな人間だってそうじゃないのかな。自ら死を選ぶひとは別だけど。

 だから死にたくないから生きたいっていうのは、理由としては十分じゃないのかな。

 
 リビングの床に正座して洗濯物を畳みながら心のなかでごちる。

 この数日は鬼丸の声は聞こえない。

 けど、また突然聞こえてくるんだろうか?

 
 「あ、結構溜まってるだろう? すまんな」

 配達の途中で着替えに帰ってきたお父さんが顔を出す。

 真ん丸な顔は汗だくだった。

 「夏休みだしこれくらいしなきゃね」

 母さんが死んでから、家のことはほとんどお父さんに任せっきりだ。

 昨日も疲れて帰ってきたお父さんが洗濯機を回す姿を見ていたらチクチクと胸が痛くなった。


 なんだかお父さんの背中が可哀想に見えた。


 それに、喫茶店でトモちゃんに言われた言葉がわたしのなかでふと蘇ったのもある。


 お父さんが汗水垂らして働いているのに、わたしはーーー。