それから練習の時間は仮病を使って見学した。
その仮病がいつまでも続かないことはわかっていたけど、失敗したくない。失敗すればみんなの努力が無駄になる。
もしかしたら責められるかもしれない。
そうやって傷つくくらいなら最初から諦めた方が楽だった。
『出来ないって思ってるから出来ないんだよ』
わたしの様子に真っ先に気づいたのは奏多だ。
『奏多は跳べるからいいよね』
わたしは胸のうちを言い当てられたことに動揺して嫌な言い方をした。
『ナツは出来ないんじゃないよ。やろうとしないだけだ』
怒ってもないしわたしを責めてもなかった。
奏多はその言葉を真っ直ぐにわたしにぶつけてきた。
時間がかかったし、みんなを困らせたかもしれない。
でも、たった一度だけ跳べたんだ、わたしも。
『ほらな。ナツはやれば出来る子なんだよ』
このときの奏多は妙に頼もしかった。