『ちゃんとご飯を作っているの? 洗濯は? 窓を開けて空気の入れ換えもしてる?』

 まるで継母から言いつけをされるシンデレラにでもなったようだった。

 それからは奏多に誘われてもお見舞いに行く回数も減った。

 奏多はときどき母さんの顔を見に行って、その様子をわたしに報告してくれたけど、正直聞きたくなかった。
 
 頼んだわけでもないのに。

 
 『どこにいても恥ずかしくない人間になりなさいね』

 それが、亡くなる前日に会ったときに言われた母さんの最後の言葉だった。

 学校の先生に注意されたような気持ちになった。

 わたしはどうしても母さんが変わってしまった訳がわからないままなのに。


 凛子だってわたしがそう愚痴っていたことを知っていたはずだ。


 『おばさん、なっちゃんのことが大切だったんだね。私には伝わるよ』

 なんの話から母さんの話に変わったのか覚えていないけれど、凛子がそう言った。

 いつも話すのが遅い凛子が、とても真っ直ぐに、迷うこともせず。

 
 わたしよりずっと母さんのことをわかっているみたいに。