「きっと相談だってナツとのことだろ。なら、ハワイに行く前に聞かなきゃ」
足元からゆっくりと奏多を見上げるとわたしを見て頷いた。
今年の奏多はなんだか大人びている。
自分がちっぽけに思えるくらい。
「喧嘩したんじゃない。凛子が、悪いんじゃない……」
「うん」
奏多もそれをわかっているだろう。
そして、わたしが母さんの話をされるのが嫌いだということも。
中学三年生になってすぐの春。
母さんは肺癌で亡くなった。
タバコを吸っていたわけじゃない。
それでも肺癌にはなるのね、と不謹慎にも葬儀で親戚が話していた。
母さんのことは大好きだった。たぶん。
少なくも子供の頃は、大好きだった。
抱き締めてくれる母さんの腕。家に帰ればおかえりと言ってくれる声。
「なっちゃん」と呼んでくれる優しい声も鮮明に覚えている。
でも、中学に上がってからの母さんはすっかり変わってしまった。
まるで、家に知らないおばさんが来たような気持ちだった。