「夏休みが終わったらあっという間に秋になって、気づいたら高二だろ?」

 「そんなの、まだまだ先だよ」

 まだ高校に入ったばっかりだし。

 わたしには時間が長く感じる。毎日が退屈で目的もない。陸のように夢もないし、奏多のようにやりたいことも特にない。
 
 そう思っていたのはきっとわたしだけだった。

 「俺らが思ってるより時間は待ってくれないんだよ、ナツ」

 わたしに言うように、自分自身に言い聞かせるように、奏多は言った。


 せめてこっちを向いて言ってくれたらよかった。

 そうすれば、奏多がどんな表情をしていたのかわかったのに。


 見落とさずに済んだのに。