「でも、陸はサッカーがやりたいんだろ? だから、今だってここにいる」

 ここは、夢を追いかける陸の練習スポット。

 「そんなこと言いにきたのかよ……暇人だな」

 「ああ。今までは言わなかったけど、言いたくなった」 
 
 沈んだ声とは裏腹に奏多は笑った。
 
 陸は足元に視線を落として目を伏せる。

 「やっぱり好きな気持ちは誤魔化せないだろ? 諦めてる陸なんか、超カッコ悪いよ」

 怒るでも呆れるでもなく奏多はそう言った。

 陸がビックリしたように目を瞬く。

 「俺はもう言わない。これが最後。ごめんな、邪魔して」

 踵を返した奏多は振り返らなかった。