空き地が近くなるにつれてボールが弾む音も大きくなった。

 トン、トン、トン。

 リフティングをする音。

 短くダッシュを切る足音にドリブルをする陸の姿が頭に浮かんだ。

 「ほら、やっぱりいたろ?」

 奏多の横顔に笑みが溢れる。

 「なんだよお前ら。高校生の夏休みも一緒かよ」

 こちらに気づいた陸が足でボールを止めると眉根を寄せた。

 「俺がナツを付き合わせてんだよ」

 空き地の真ん中まで足を進める奏多についていく。

 陸の顔は出来るだけ見たくない。

 「……なるほどな。そういうことか」

 なにがなるほどなのかわたしにはわからない。

 けど、わざとらしく陸は溜め息をついた。

 「暑苦しいな、お前ら」

 「陸こそ、なにしてんの? サッカー辞めたんじゃないの」

 自分の発した声が低い。