『夏希は後回し星人だよな。いつも、そうやって逃げてばっかりじゃねぇか』
終業式の日の帰りにふと下駄箱でそう言われたのだ。
そのときの陸は鼻の頭に皺を寄せて怒っていた。悔しそうにも見えたかもしれない。
わたしは苦く笑ってやり過ごしたけれど、内心はモヤモヤした。ムカついたし、悔しかった。
わたしがいつ、なにから逃げてるというのか。
それ以来、陸のいそうな場所には絶対に行かなかった。
「陸どこにいるかな。電話してみてくれないか?」
「……わたしが? やだよ。奏多がしてよ」
「俺はスマホ持ってねぇもん。ナツと陸は持ってるじゃん」
奏多の言う通り、わたしのポケットのなかには白いスマホがある。
今年の春にお父さんが買ってきてくれた。
それも、わざわざ電車を乗り継いで、遠くの街まで行って。
「今時の子はなんでも携帯でやり取りするのね」
テレビを消したトモちゃんが背後から顔を出した。