着替えて家を出ると茹だるような暑さがまとわりついた。
『優木』
そう書かれた喫茶店の前に立っているだけでじわりと汗が滲んでくる。
「遅いよ、奏多。乙女に日焼けは禁物なんだからね」
十分ほどして奏多がやってきた。
「悪い悪い。って、誰が乙女だ。先に入ってればよかったろ?」
タンクトップから伸びる腕は汗で光っている。
「そうだけどさ」
わたしは、奏多のやりたいことがなんなのか気になって、待ち合わせよりだいぶ早くに家を出たのだ。
「ほら、焼けたくないんだろ? 入ろう」
そんな暑さから逃れるようにトモちゃんの喫茶店へと入った。
昨日の別れ際に奏多が指定した待ち合わせ場所だ。
いつもは、七草神社と子供の頃から決まっていたけれど、話をするなら涼しい方が断然いいと特に突っ込まなかった。