「うん。そうだけど、今年はどうしてもやりたいことがあるんだ。だから付き合って、ナツ」

 ふと終業式の数日前の奏多の姿が蘇った。

 よそよそしく目を泳がせる奏多。

 なにかを言いたげにしていた。

 だけどわたしは、どうせ明日になったら言ってくるだろうと思い自分からは聞かなかった。

 それに、わたしが事故に遭うまでの夏休みだってそんな話を持ちかけられたことはなかった。

 本当はわたしにこの話をしたかったのかな。


 「わかった。別にいいよ。どうしてもやりたいことなんて、一体なに?」

 聞きながら足元に転がる小石を蹴った。

 「それは明日な。昼に待ち合わせしよう」

 「あ。奏多も明日って言ってるじゃん。わたしのこと言えないんじゃないの?」

 ふっと眉が下がって困ったように笑った。

 「そうかもな。でも、今日言えてよかった」

 歩き出す奏多の横顔を追いかける。

 サイダーの炭酸がどこかで残っていたのか、胸のなかでシュワッと弾けた気がした。