「あのさ、お土産ありがとう……」

 サイダーを手にすると奏多がこっちを向いた。

 「どうしたんだよナツ。今までなら今さらかよってくらいあとにお礼言ってきたのに」

 苦い笑いをするわたしをよそに、奏多は涼しげな顔をしてサイダーを飲んでいる。

 「まぁ、そうだけどさ。わざわざ届けに来てくれたでしょ」


 以前のわたしならお礼は明日でいいや、どうせ会えるしって思っていた。

 でも今は、顔を見て素直に言葉に出た。

 夜みたいに暗いあの裁判所から戻ってきたからかな。

 ちょっと怖い思いもしたし、奏多の顔を見て安心したのかな。

 奏多はなにも言わずに口許を緩ませた。その笑顔が妙に優しく映る。

 「……で、長野はどうだった? 今回は結構長いこと行ってたんだね」

 顔が熱い……。パタパタと手で扇ぐ。

 「影森より都会だし、ばあちゃんも思ったより元気だし、楽しかったよ」

 「へぇ。もう帰ってこないかと思ったよ」

 「なんだそれ。たった一週間じゃん」

 「そうだけど、今までで一番長かったから」

 奏多は長期休みとかゴールデンウィークになると、長野のばぁちゃんの家に行くことがある。

 だいたい三日くらいで帰ってきていたけど、今回は一週間。長く感じたし、退屈だった。