「お疲れ。てか奏多、家に来たならわたしのこと起こしてくれてもよかったのに」
「はぁ? なんだよそれ。ねぼすけのクセに」
わたしの顔を覗きこんで目を細くして笑う。
ねぼすけだったのは奏多の方じゃん。小学校のときはわたしが奏多の家のチャイムを鳴らした。それから支度するもんだから、わたしまで遅刻したことが何回もある。
けどわたしは先に行かなかった。奏多を待っていた。
奏多と一緒がいいから。いつも一緒にいるのが当たり前だから。
「明日からは少し早く起きるってば!」
「あ、出た。ナツの、“明日”。もうそれ口癖だよな」
「そうかな。自分の口癖なんて、人に言われなきゃわからないけど」
「いつも言ってんじゃん。そうやって明日、明日って言ってると、そのうち後悔するぞ?」
うっ、とおまんじゅうが喉に詰まりそうになった。
現に奏多の話を聞かずに飛び出したからトラックに轢かれたわけだけど。
まさかわたしが過去に戻ってきているなんて、そんなこと口が裂けても奏多には言えない。
もちろん、信じてもらえるわけがない。
けど、わたしの話を最後まで聞いてはくれると思う。