「夏希にお土産だって。長野に旅行に行ってたみたいだぞ」

 「長野に……」

 奏多は夏休みになったらすぐに長野に行くと話していた。おばあちゃん家があるからだ。

 それでわたしは学校の終業式でお土産をねだったんだ。


 そして今日、八月一日は奏多が帰ってきた日。

 確かもらったお土産は、

 「おっ。可愛いな。夏らしくていいじゃないか。よかったな?」

 「うん。早速飾ろうかな」

 これが二回目の今日だから、包み紙を開ける前にわかっていたけど、素直に嬉しかった。


 ひまわりの絵が描かれた風鈴。

 揺らすと、チリンと夏の音が心地よく響いた。


 「ちょっと出かけてくるね」

 「ああ。行っておいで。せっかくの夏休みなんだから」


 わたしはサンダルに足を突っ掛けると家を飛び出した。


 緑の香りに混ざって夏の匂いがする。


 今すぐ、奏多の顔が見たくなった。