そう。あの日、奏多がわたしにくれたものだ。

 昨日のことのように思い出す。


 ーーー奏多 

 
 わたしはハッとしてまだ涙を払い続けているお父さんを見る。

 「どうしたんだい? まだ無理に起きなくていいんだぞ。十日も眠っていたんだから」

 父さんは心配そうな顔をしてわたしに教えてくれた。

 十日も……。

 そんなに時間が経っていたなんて驚いた。

 「今日は、何日?」

 わたしがぼんやりとお父さんに尋ねる。

 「九月四日だよ。もう、学校始まってるね」


 ーーー九月

 
 心のなかで繰り返すと、夏が終わったことを実感する。