「ずっとここにいてくれたの?」

 父さんは泣きたいのか笑いたいのか、両方なのか、わからない表情を浮かべてうんうんと頷いた。


 「ずいぶん眠っていたんだよ。夏希」

 「うん……」

 ここは病院なのだとようやく思考が追い付いた。

 
 「よかった……本当に」

 父さんが鼻を啜りながら目元を覆う。

 わたしまで泣きそうになる。

 おかしいなぁ。たくさん泣いたはずなのにね。


 身体を起こそうとしたけれどまだ力が入らなかった。

 けど、掛け布団の上に青いラインの入ったノートがあることに気づく。

 だいぶ年季の入ったノート。

 
 よかった。ちゃんとここにあって。

 
 それが母さんの残してくれたものだとわたしは知っているから。