わたしは鬼丸の鋭い瞳をじっと見つめた。

 「うん。わかる。今わかった気がする……」

 もう遅いのかもしれない。

 けど、わかってよかったのだと思う。


 わたしは鬼丸を見つめ返した。

 もう、その瞳から目を逸らしたりしない。

 
 鬼丸はわたしに『最後の夏休み』を与えると言った。

 だけど期限までは与えなかった。

 人の話はちゃんと最後まで聞かなきゃね。

 わたしの気持ちや行動ひとつで変えられることはたくさんある。たくさんあった。

 きっといつ死んでもおかしくなったし、夏休みの最後の最後まで、生きることも出来たんじゃないかとわたしは思う。
 
 『精一杯、生きろ』

 そう言って鬼丸はわたしを送り出してくれた。

 夏休みの間だってそう。

 不思議なことに鬼丸の声がわたしには聞こえた。
 
 忠告のようにもとれたし、なにかを教えてくれているようにもとれた。
 

 鬼丸はそうやって、わたしの背中を押してくれたんじゃないかな。

 
 「鬼丸、わたしがここに来たとき言ってたよね。みんながみんなやり直せるわけじゃないって……」

 「ああ。そうだ」

 鬼丸がはっきりと頷く。