目を覚ますと真っ暗な海の底に一筋の光が見えた。
ゆらゆら揺れる光は消えそうでなかなか消えない。
その光がなんなのか、光を求めて、わたしは歩き出す。
身体が少し重たいけれど気分は悪くない。
むしろスッキリしている。
「夏希」
低くしゃがれた声がわたしの名を呼ぶ。
前を見据えると先ほどまであったはずの光は消えていた。
もう、名前を呼んでくれるのはこの男しかいないのかもしれないとわたしは思った。
そっか。わたし、戻ってきたんだね。
『生と死の裁判所』に。
今までは、長い長い夏休みは毎年退屈で、なにをして一日を消化するか考えたりしたこともあった。
けど、最後の夏休みはあっという間だった。
もっと時間があると思っていた。
でも、わたしはもうここに戻ってきてしまったんだ。