わたしは今晩夜祭りが行われる七草神社とは違う方向に進んでいく。
『その前に、どうしても話したいことがあるんだ』
奏多は電話でやっぱりそう言った。
声がくぐもって聞こえた。
わたしはついにきた……と、思わず息を呑んだ。
羊ヶ丘公園は時々サッカーの試合が行われるくらい広い。奥にグラウンドがあり入り口付近はいくつか遊具がある。
この暑さのせいか、それとも夜祭りがあるからか、公園には誰もいなかった。
静かだった。
わたしは空を見上げる。
「鬼丸、わたしは最後まで生きるから」
途中で逃げ出したりしない。もう、逃げない。
「ナツ」
ブランコの前で空を見上げていると背後から名前を呼ばれて振り返る。
「奏多」
ぎこちなく手を挙げた奏多が駆けてくる。
癖のある黒い髪がふわふわと揺れた。