「ただ、あの時の彼女を見て思ったのですが、香月くんはもうその力を使うべきでは無いかもしれませんね。
…あの苦しみ方は異常です」
物悲しげな声とともに、摩る音が消える。
「彼女は大きな力を持っているようですが、代償にあの苦しみがやってくるのかもしれませんね」
山南さんの言葉に誰一人返せずにいた。
事実、俺達は雨を犠牲に救われたようなものだ。
そして雨に恩を返すことが間に合わず、一葉に雨を救ってもらった。
本当はこんな所、壊してでも出て雨の無事を確認してぇよ…。
立場と自分の弱さが無力さを更に痛感させる。
「……くそ…。
もっと強ければ…」
俺の口から漏れた言葉に、目の前の二人はピクリと肩を揺らす。
斎藤は俯き、新八は心配そうに眉を下げた。
「客観的に見た意見なので、楽観視し過ぎているかもしれませんが、香月くんに危害を加えられるようなことはないでしょう。
きっと手厚く介抱されていますよ…」
そう言ってくれた山南さんの声も、少し弱々しく感じられた。