「…どういう内容の文を書いたんだ?」


握りしめられた斎藤の拳とは裏腹な冷静な声が、俺達のいる牢屋にやけに響いた。


冷や汗が背中を滑る感覚がする。



「〝城に襲撃あり。

負傷者多数、死者は今のところ無し。

待機命令〟」


俺と斎藤は苦虫を噛み潰したよう表情をしていた。

だが、新八は片眉を上げて顎に手を置き、不思議そうに首を傾げる。



「それの何処が悪いんだ?」


俺と斎藤、壁を隔てた向こうから溜め息が漏れる。

新八は「なっなんだよっ!」と不満げに声を張る。



「…待機命令が出た以上、副長は新撰組の事を一番に考え、待機命令を飲むだろう。

…だが、他の隊員、特に総司は納得できるはずがない」


斎藤の説明に、新八はコクコクと頷く。



「…山崎の話から推測するに、文を書いたのは今回の襲撃に合う前。

…つまり、その文の本当の目的は〝香月〟だったという事になる」