少年の頬を掠めて、クナイが壁に突き刺さる。

目を見開かせ、ゆっくりと後ろを振り返る少年。



「お前がさっさと俺がさっき言ったことを調べてくれば、よりよく事と次第が進むんだけど」


黒髪の男は少年の方を見向きもせず、紙と睨めっこしている。



「あ…相変わらず容赦ないっすね…」


ツツーッと血の滴る頬を手で覆い、引き攣った笑顔で男に向き直る。

その表情さえも少年の中には余裕を感じさせていた。


それ以上何も言わない男に、大袈裟な程大きな溜め息をつき、ゆっくりと立ち上がる。


「え〜っと、〝新撰組〟の事っすよね。

了解っす!

秒で帰りまーす」


両手を頭の後ろで組み、言葉とは裏腹にゆっくりとした歩きで部屋を出て行く少年にも、男はやっぱり何の興味の色も示さなかった。


「あ〜ぁ、なーんで皆雨さんの事になると制御が効かなくなるのかなぁ〜?」


呟く少年の瞳の色は、楽しげな表情とはちぐはぐであった。


「翔」