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「あーぁ、雨さんに嫌われちゃいますよー?」


畳の上であぐらをかき、ニッコリと笑う少年に、黒髪の男がギロリと睨みつけた。


「やっぱ第一声は驚きの言葉でしたかー?」

「人の部屋で勝手に寛いで、つまんないこと聞くな」



微かな殺気に少年は「すんませんした…」と、苦笑いを返す。


黒髪の男は机に向き直り、積まれた何枚かの紙に目を通し始めた。



「雨さん、やっぱ昔のことあんま覚えてないって言ってたっす」

「……」

「覚えてるのは、一葉さんの事くらいっすよ。

悲しいっす…。

まぁそこも曖昧みたいっすけど」

「…」


見向きもしない男に、少年は眉を下げてクスリと笑う。

そして開かれた障子の方を向いて、ふぅっと息を吐いた。


「今日は曇ってて、雨が降りそうっすね」

「……」

「ねぇ、一葉さん」

「…」

「事と次第は本当に、貴方の望んだ通りに進んでるんすか?」