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夢を見た。


私は今よりも随分手も小さくて、目線の位置も低い。


必死に短い手を伸ばしている。


短い脚をバタバタと動かし、目の前の男に追いつこうともがいている。



漆黒の髪の横髪だけほかの髪より長いその彼は、そんな私をじっと見ているだけ。


置いていかないで…。

お願い…。

傍に置いていて…、一葉…。



引き裂かれているかのように心が苦しい。

そんな夢だった。



瞼を開けると、何故か見知らぬ天井。

夢を見たから、今の現実を忘れてしまったとかそういう馬鹿げた話ではなく、本当に知らない天井。


左右を見ても知らない柄の襖と障子。



まだ少しビキビキと響く体を労りながら、上半身を起こす。


障子が開いて、桶と手拭いを持った着物姿の見知った顔が静かに入ってきた。



「!!」

私よりも驚いた顔で動きを止める女性。


障子の向こうの縁側では、どこか懐かしい背中。



「……………どうなってんの?」