槍が彼を狙うが、既のところで空を斬る。
原田佐之助の腹部に拳が叩きつけられる瞬間に、彼の手がその拳を掴んだ。
「なるほどな…」
〝一葉〟は少し口角を上げる。
その後方から斎藤一の刀が〝一葉〟の首を狙うが、しゃがみ込まれてまた空を斬る。
原田佐之助の手が離れ、〝一葉〟の四肢が自由になる。
「あっぶね…。
斎藤、気持ちは分かるが、俺まで斬る気か?」
「…そんなヘマはしない」
2人の軽口を叩く油断を見逃さず、翔と美華は一気に突っ切った。
「逃すな!!!!」
未だ唖然としている隊士達に、近藤勇の怒号が飛ぶが、時は既に遅し。
その油断は、彼らが戦場を抜けるには十分な時間だった。
「一葉さーん!
殺しちゃ駄目っすからねーっ!」
気の抜けるような台詞と共に、彼らの背中が遠ざかっていくのであった。
「下手すれば、殺してしまいそうだな」
ぼそりと呟いて、再びニヤリと笑う外套の彼を残して。