「翔」
未だ彼女たちの横にいた外套の男が、彼を呼ぶ。
目線だけを外套の男にチラリと向ける。
「蹴散らして早く帰る。
遊ぶな」
外套の下から刀を抜くと、音もなく黒い兵士に襲いかかった。
翔は「はいはい」とニコリと笑い、ペースを上げていく。
新選組隊士たちは目を疑った。
今まで見てきた彼は一体何だったのか。
1時間程だろうか。
城門制圧が完了した。
翔の動きは確かに稽古よりもずば抜けた驚きがあったが、新撰組幹部たちを驚愕させたのは、やはり外套の男であった。
残りの4分の1を制圧してみせたこの男との圧倒的実力差。
一朝一夕に身につけられるものではない事を、彼らは痛いほど理解していた。
「終わったっすねー。
あ、雨さんどうするんすか、〝一葉〟さん」
パッと香月雨の方を振り向く。
美華は先程よりもギュッと彼女の肩に力を入れる。
外套の男〝 一葉〟は彼女を見下ろすと、また横抱きにする。