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香月雨の体が宙に投げ出された時、絶望の色が周囲を漂った。


新撰組隊士たちは呆然と見ていた。



原田左之助たちは途中まで足を止められないでいた。


彼らの足を止めたのは、隣の塔から横に飛び込んできた黒い人影だった。



人形のように抵抗もせず落ちていく彼女を横抱きにし、その勢いで壁を蹴り上がっていく。


そのまま瓦の上に何事も無かったかのように立っている。

遅れて駆け上がった2つの影。



「セーフっすね!」


あっけらかんと笑う彼の胸をポコポコと叩くもう1つの影。


「あんたが行かせたのがそもそもの間違えなんだからね!

〝一葉〟が助けたことで、あんたが命拾いしたんだからね、〝翔〟」

「はぁ…」



新撰組の隊員たちは愕然と3人の様子を見ていた。



そして3人は戦場へと降り立つ。




「〝美華〟、このバカ抱えてろ」


黒い外套の男が美華と呼ばれる女性に、香月雨を任せる。


彼女は香月雨をその場に座らせ、両肩を支える。



「翔…?

お前、こんなとこにいたのかよ。

ってか、何して…?」


永倉新八は回らない頭で、疑問を口にする。


無防備になった彼の元に翔と呼ばれた少年が駆け出す。