◇◆◇◆◇


微かに聞こえる。

懐かしいあの歌。


私が扉に近づくと、結が私の腕を掴む。



「月姉様、いけません。

外は交戦中です!」

「でも…!」


険しい結の手をぎゅっと握って、自分から離す。


私の我儘でこの国を危険には晒せないということは分かっている。



せめて窓を開けて、外の音を聞く。



すると、流れる懐かしい歌がはっきりと聞こえてくる。



「この歌は…、月姉様がよく歌われていた…?

一体誰が?」


結が首を傾げて、疑問を口に出しているけれど、今の私に答える余裕など無かった。



「あの子が………、あの子が居るわ…」

「月姉様?」


結の肩を必死を掴む。

驚いた顔をしていたけれど、そんなのはお構い無しだった。



「あの子が帰ってきてる!

今ここに、この敷地の中にあの子がいるわ!」


自分の腰かける車椅子を推し、再び扉に迫るが、結に止められてしまう。



「月姉様!

もし本当に月姉様の御子がお帰りならば、他の者に探させます!

今はこちらにいらして下さい」


真剣な表情の彼女だったが、私にも止められない理由があった。