遠目からは分かりづらいが、敬助の傷はかなり酷い。


一が敬助の傷を確認し、懐から取り出した手ぬぐいで素早く縛り上げる。


「っっっ!!!」

声にならない声が聞こえる。


二人の前を勇がフォローしている。

普通なら大将が前に出ることは有り得ないが、周りには傷ついた隊士が多数ギリギリで立っていた。



離れた場所の新八は右手から出血しながらも、戦っている。


その横には庇いながら戦う左之が立っていた。



「悪いな、左之。

こんなことになっちまってよ…」

「気にするな。

今は退けることだけ考えてろ!」



数でいえば互角、いや、黒い兵士の方が少し多い。


皆、肩で息をしている。

後ろの隊士たちは、立っているのかやっとなのか刀で自分を支えながら立っている者も見られる。


私が〝歌え〟ば…。

いや、戦場でそうすれば無防備になる。

足でまといになるかもしれない。



下を見る。

ここを選べば、転がり落ちてしまう。


〝即死〟の二文字が頭をよぎる。


安全な場所に行けばいいが、私の歌が有効は範囲が分からない。


足でまといにならないようにするには、この場所が一番良いラインではある。