で、素早く閉める。

間にして一秒もなかった。後ろの小人さんたちはおろか、隣のセーレさんとて事態を呑み込めていないだろう。あれだけ最初に見ると啖呵を切った私がやったのは、扉の開閉。きちんと確認せずに臆病風に吹かれたと思われようが。

「……、うぞうぞ」

「え」

「うぞうぞ、してました」

ことのあらましを、私は語る。

一瞬にして判断出来た。あれは、『うぞうぞ』していた。

何がどういうことだとは私も教えてほしい。けど、これは誰もが経験し得ることだ。

人が嫌悪感を抱く生物がいる。一部の人はそれが好きだと言うだろうけど、残念ながら私はおおよそ大多数の部類に入る。

台所の引き出しを開けたらカサカサ蠢くものがいました、靴をはいたらぶちゅっと何かを潰しました、寝ていたらボトリと顔に何か落ちてきました。ーーそう、正にこれはそういった形容しがたい恐怖の塊。正体を知る前に本能的反射的に現実から逃避してしまいたくなるような悲鳴すらも絶句する物がいて。


「雪木、俺が中を確認してもいいか?」

全力で首を横に振る。しかして現実は厳しい。

怖いもの見たさという言葉がある。文字通りで、そこまで人を恐怖させるものは何だと彼ではなく。

「んもうっ、焦れったいわねぇ。いったい中はどうなってーー」

誰よりも好奇心旺盛な大男ならぬ大乙女が扉を開け、フリーズした。

扉を開け放たれたままのフリーズだったので、今度は全員が確認出来ただろう。

小屋にみっちりと詰まった『うぞうぞ』するものを。