(二)

我が図書館『フォレスト』のコンセプトは、“どこまでも夢見心地な安らぎを”だ。

人と聖霊が繁栄しきった世界において、今や都市部だけでなく地方も人口が増加しつつある。そんな現代だからこそ、図書館という“静かな場所”が人気を集めるのも頷けることだ。


純粋に『遊び』(アトラクション)として楽しむ人もいれば、無論、『読書』をするだけに訪れる人も。宿泊施設も設けているため、一日中寝ていたい人にも人気だった。

目的は違えど、ここに来る人は皆、眠っている状態の方が多くとなる。

絵本の中でいくらはしゃぎ回ろうとも、『訪問』最中、体は眠っている。人が見る夢と絵本の世界をシンクロさせるとかなんとか、そこは聖霊『ブック』による神秘としか人類(凡人)には言いようがない。

よくあるのが、子供にアトラクションを楽しませて、その親は仮眠スペースにて休むといったケースか。『訪問』最中の人間が起きるには、図書館スタッフが起こすか、本人が単に『目覚めたい』と願うだけでいいがアトラクションを途中で終わりたいと抜ける子はあまりいないため、親としてもゆっくり出来る時間となろう。

図書館『フォレスト』の敷地内には、二棟の建物があり。一つは受け付けや、宿泊施設。従業員専用の宿舎、貴重な蔵書、物語世界の管理維持をするための建物だ。古城をモチーフにしており、赤茶の外壁は雄大ではあるが、内部に至ってはエレベーターや、広い城内を素早く移動出来る水平エスカレーターなど、機械的な物が多くなる。便利と言えば便利なのだが、思っていたのと違うとは誰しも思うことだろう。

『バカみたいに広いし、足腰がきついからー』とした理由から建設時に妥協の一点もしなかった司書長。古き良きよりも、便利さを取った。古き良き(由緒)を求める身としての救いは、完全防音で、バロック様式の家具が揃えられた格式ある室内で過ごせる点だろう。

そんな古城より外へ。
古城に相応しい庭園。薔薇のアーチによって出来たおしゃれな道を優雅に歩くこともなく、これもまた水平エスカレーターで素早く移動。今日は晴れかぁという感想も抱けない内に、全面ガラス張りの建物についた。

「青空のもと、庭園でのお散歩とか夢ですよねぇ……」

「この辺りの区画の天気を聖霊に聞いてまいりまするか?もしくは、某がソソギ殿のために一肌脱ぎまする!青空にするぐらい、天候操作の聖霊と某はお菓子パーティーを開くほど仲がいいーー失敬、よく定例会を開き、人々のために役立とうと考えておりまする!」

「いえ、そういったわけではなく」

結局のところ、私も便利さに頼ってしまうのが虚しくなる。だって、本館からリーディングルームまで歩いて10分はかかるのだから、かなりしんどい。楽して移動もしたくなる。

ドーム状の全面ガラス張り施設は、通称リーディングルーム。もしくはプレイルームか。呼び方は何でもいいが、ここは『訪問』専用の建物となる。

リーディングルームの内装を説明するならば、『庭園』だ。室内にある庭園とは矛盾しているかもしれないが、草木や花々が息吹く室内を見れば誰もが納得するだろう。

生い茂る草原に寝そべる子供たち。ゲノゲさんが添い寝してくれるオプションつきで。あの真ん中に割り込み寝そべりたい。

起きているのは図書館スタッフのみで、『訪問』最中の人たちに問題はないかと見回っているが、それほど大きな問題はないため、スタッフもどこか眠たそうだった。

欠伸をしそうになったが、私と目が合うなりにはっとする新人さんがいた。分かるよその気持ちの意味を込めて、笑っておく。

さて、野々花はどこにと探そうとすれば。