芝生の上に転がり眠りたい。そんな言葉が似合う世界だった。

青々とした空に、綿菓子のような雲。
黄色い小鳥がささやか程度に鳴いて、白い小ぶりの花たちがさわさわと揺らめく草原。生の息吹きを肌から感じる反面、全てがうとうとと眠りについていくのが分かる穏やかなここで。

「えー、犯人に告ぎます!今すぐ赤ずきんちゃんを解放しなさい!繰り返します、今すぐ赤ずきんちゃんを解放しなさい!」

私はいったい、何をしているのだろうか。
小型の拡声器を片手に持ち、自らこの世界に似つかわしくないことをしている。

いっそ、このまま眠りたい。全てを忘れて、思うがまま惰眠を貪りたい。絶対に羊さんに乗って空をふよふよ漂う夢を見られるから。けれども、そうは問屋が卸さなかった。

「離すものかー!俺は赤ずきんと結婚するんだー!」

茶色いつなぎを着た、これまた茶色い剛毛を持つ二足歩行生物が、小さな女の子を脇に抱えて騒いでいるのだから、眠るわけにもいかないだろう。