そんな調子だから、授業なんか集中できるわけない。

「海園さん」

「……」

「海園さん?」

「っ?!ふぁ、ふぁいっ!」

先生に呼ばれていることに全然気付かず、おまけに腑抜けな返事をしてしまう。

当然、クラスは笑いの嵐に包まれる。

あたしは、穴があったら入りたかった。


顔を真っ赤にしてうつむいたその時、


「あの、先生」

レン君がひょいと手を上げた。

クールで、あまり口数の多くないレン君の突然の挙手に女子だけじゃなく、男子までレン君に注目する。

「お願いがあって」

「?なあに?」

「俺の席を、前にしてくれませんか」


えー……!?