写真に写っている『瀬永』は、娘の『瀬永』ではない。

娘に名前を貰った『瀬永』だ。

私の全てだった人の名前を娘につけた。

なにもかも無くなったあの日から、一体どれだけの時間を超えたのだろうか。

あの一件以来、私は涙を流さなくなった。

悲しいという感情を無くしてしまったのが一因なら、もうこれ以上の事などありはしない。

消防署を出て、車に乗り込む。

家までの道程は短いものだが、今日は真面目にシートベルトをする気になり、ベルトをしめる。

暗い気持ちを打ち消すように、明日の仕事の予定を立てる。

今週いっぱいは深夜までの勤務で比較的日中はゆっくりできる。

そんな時、煙草がないことに気がついた。

コンビニに入ると、見るからに悪そうな少年たちが店に入ってきた。