「社長?」


「長嶺と壁を感じる。」


「えっ?」


「俺は関係ないって言われてるみたいで。」


「いえ、そんなつもりでは。」



片付けをしていた手を止めて社長を見上げた。



「仕事とは関係ない事ですので。仕事は仕事でちゃんと頑張りますから。」


「俺って頼りにならない?」


「ふふっ、社長は社員のプライベートまで気になるんですか?」


「長嶺は俺のプライベートは気にならない?」



社長の声が少し怒っているように感じる。



「俺は気になる。長嶺のプライベートは。」


「………社長?」


「悪い。何でもない。」



社長が私に背を向けて会議室を出ていく。



「お疲れ様、長嶺。」


「はい。社長もお疲れ様でした。」



会議室を出ていく社長の背中を見送る。


社長はどの社員にも言ってるのだろうか。



「ふふっ、言ってるわよね。私が特別な訳じゃないし。」



私は会議室の片付けを終わらせ、急いで自分の席に戻った。