「花菜、俺は焦らないから。」


「駄目よ、歳も歳なんだから。」


「花菜は若いし、仕事も楽しい時期だろうから。」



フォローしてくれる健人さんの気持ちは嬉しい。だけど私は――――。



「結婚したら仕事は辞めます。」


「花菜!」


「健人さんに甘えてばかりでは駄目だと思う。それに………お二人に譲歩して戴いた気持ちにも応えたい。」


「花菜!」



健人さんを見上げてにっこりと微笑んだ。



「幸せがずっと続くなら大切にしたい。」


「花菜………?」


「一緒に暮らせるんだよ?嬉しくないの?」


「………。」


「もう迷わない。先のある未来を大切にしたい。だから――――。」



「………。」


「仕事より………健人さんと二人で過ごす未来を大切にする。」



健人さんの腕が私を強く抱き締める。


この腕を離したくないと思った。



「健人さん、やっと頷けるよ。一緒に暮らそう。」