まさか連絡もなしに現れるとは思ってもみなかった。



「お待たせ。」



社長の笑みが怖い。目が笑っていない。



「社長、長谷川さん、お先に盛り上がってます。」


「ああ、みたいだね。」


「お二人はビールでいいですか?」


「「頼む。」」



社長が私の隣に、そして長谷川さんはあゆみの隣に腰掛けた。


社長をチラリと見れば、社長も私を見ていた。



「花菜、楽しそうだね?」


「えっ?」


「酔ってる?頬が赤いよ?」


「えっ?あっ、飲みすぎかな?」


「飲みすぎるなよ。」



社長の小さな呟きが聞こえた。


奥寺と私の話で盛り上がっていたのを聞いていたに違いない。



「社長と長嶺は結婚前提?」



奥寺の言葉に私の動きが固まる。視線だけを奥寺に向ける。


奥寺の視線は社長に向けられている。



「奥寺?」



私の声に奥寺の視線と合う。じっと私を見つめる奥寺を見つめ返す。