シングルファーザーとして、男手ひとつで私を育ててくれたお父さん。

二人三脚でここまでやってきた。


寂しい思いをしなかったか、と聞かれると否定はできない。


だけど、どこの父親よりも、優しくておおらかで逞しい父親だと思っている。



まあ、恥ずかしくて直接は言えないけど。



「お風呂入るよね?沸かしとくよ」


「ああ、ありがとな」



寝るまでの数時間、今日は自室に籠らずになるべくリビングでお父さんと過した。


会話は多くないし、お互い仕事の話も、学校や友人の話も深く尋ねたりしない。


本当に他愛もない話を少し重ねて、1ヵ月ぶりに


「おやすみ」


と、挨拶を交わした。


私たち親子には、それだけで十分だ。




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翌朝目覚めるとテーブルの上にお皿がひとつ。


まだ焼かれていないトーストに形の悪い卵焼きが添えてあった。



『おはよう、桔子。
昨日の夕食、美味しかったよ。
今日も学校がんばって。
いってきます。 父 』



雑に切り取られたメモに、味のある文字。


お父さんの書いた文字を目にしたのも、凄く久しぶりのように感じる。



今日の歪な卵焼きは、ほんのり甘かった。