「今日はありがとうございました」


「なんでそんなかしこまってんの」


「だって…。お金も、車も…」



人に奢ってもらうことが苦手な私は、1000円だけでも、と格闘したけど、結局あの華麗な笑顔で流されてしまった。

その上、家の前まで送ってもらって…

してもらってばかりなことに申し訳ない気持ちが湧く。



「桔子ちゃん。女の子はそんなこと気にしなくていいの」


「けど、友達でしょ。関係は対等じゃん」



私の言葉に優しく微笑む幸くん。



「いくら友達でも、年下の女の子にあんな少しの食事代でお金を出させる訳には行かないし、夜に1人で返すわけにはいかない」



わかった?

なんて穏やかな口調で真っ直ぐ目を見つめられたら頷かない訳にはいかない。



「よし、いい子」



首を縦にふった私をみて納得したように頷く。



「じゃ、今日はご飯付き合ってくれてありがとう。またね」


「うん、ありがとう。またね」



私の頭を優しくポンポンとすると、車に乗り込み帰って行った。



頭に残る大きな手の感触に、少しばかり動悸が早まっているのがわかる。

完全に幸くんのペースに巻き込まれたなぁ。

だけど、すごくすごく楽しい時間で、
久しぶりにこんなに温かい気持ちになった。