「え、どうやってきたんですか?」



なんとか平静さを取り戻して言葉を絞り出した。



「車だよ」



私の質問に、さも当たり前かのように車のキーを揺らして見せる。


やっぱりこの人、見た目だけじゃないんだな。


妙に感心していると、ほら行こ、とキャンパスの前に停めてあるひとつの車に向かっていく。

慌てて追いかけると、彼が立ち止まった先にあったのは、車に詳しくない私でも見るからにわかる高級車だった。上品なウェーブのボディは、新車の様に黒く艶めいている。生まれてからずっと平々凡々とした庶民の生活を送ってきた私には割に合わなくて、思わず足がすくんでしまう。


本当にこの人、何者?こうやってたくさんの女の人を落としてきたんだろうな。



「はい、どうぞ」



慣れた仕草で助手席のドアを開け、エスコートしてくれる幸隆くん。

ただでさえ目立つ銀髪なのに、顔は綺麗だし、その上こんな高級車付きで、さっきから周りの視線が痛い。

地味でどこにでもいるような普通の女子大生が、こんなイケメンと高級車に乗りこもうとしてる。周りの視線も相まって、居た堪れない気分になった。



「閉めるね」



私が乗り込んだのを確認してソフトにドアを閉めると、反対側に回って運転席に乗り込む。