「ゆーうー、いつまで寝てんの?もう、休み時間だってえ」

机に両腕を乗せ、それを枕代わりにしながら寝ていたあたしの頭をポカンと優しく叩いたのは親友、えっちゃんこと、国見 絵莉子(くにみ えりこ)だ。

「眠いんだからしょうがないじゃん。それに休み時間に寝て、何がいけないんだよー。授業中に寝るよりましでしょー?」
そう言うあたしにはうつ伏せになりながら、言い訳しているせいか、声がこもっているのが分かる。

「言い訳ばっかりしない!・・・それに優は授業中も寝てるでしょ!」
耳元でえっちゃんが叫ぶ。耳に音の振動が伝わる。

「もう、うるさいなあ。はーい、分かりましたよー、起きますよー」
あたしはそういうと重い体を起こす。かなり爆睡していたせいか、ボーっとする。

「バスケ部の朝練のせいにするのは駄目だからね。夜、早く寝れば良いだけの話なんだから。」
説教口調で、人差し指で天井をさしながら、ふくれっ面であたしを注意する、彼女。
こういう時は大抵、人のことを真剣に心配してくれており、素直に受け入れておいたほうが無難である。

「はーい。・・・でもなあ」

「言い訳しない!優は分かってる?もうすぐテストだよ?・・・まあ、夜に勉強してるって言うんなら、分からなくもないけど・・・」

一人で考え込んでいるえっちゃんに、あたしは、いや、違います。と心の中でだけ首を振っておいた。


キーンコーンカーンコーン。


「あっ、授業!次寝たら、もう、ノート貸さないからね!」
真面目なえっちゃんはそう言うといつものように先生が来たわけでもないのに、自分の席にすぐ座る。

「はーい。」
と生温い返事をもう既に自分の席に着席しているえっちゃんに返し、あたしはノートと教科書を机にだした。


ガラガラと教室の扉を開け、先生が入ってきて、起立・礼・着席をし、授業が始まる。
・・・これがいつもの毎日。
・・・何も変わりやしない毎日。




何かを変わらせることなんて出来ない『毎日』なんだ・・・