「全員乗ってますね~。森末、ドア閉めて」
「はい」
運転席に座っていたのは森末さん。慣れた様子でドアを閉めるとクラッチに手をかける。
こんなの動かせるなんてすごい…。お願いしますと伝えようとしたけど、伸洋さんに背中を押されて挨拶出来ずじまい。
「きゃ~!ことねぇ似合ってる~!!」
「!!?」
通路に入った直後、響いた声に肩が跳ねる。顔を上げれば真ん中の席辺りの窓側の席にいる梨々香ちゃんが立ち上がって目を輝かせてる。
と、乗っていたみなさんがいわゆる幹部とか、兄貴分とか、とにかく地位が高めな人たちであることに気づく。
う、嘘でしょ。話したことがある人たちの姿があまりなくて、流石に緊張する。
思わず奏多さんの手をぎゅっと握って軽くうつむく。
ね、寝てもいいのかな。とにかくここにいることが緊張する…。
それが伝わったのか、頭を撫でられた。