もし目撃されていたら、無理やりこの場に連れてこられていたかもしれない。

単身赴任中だったわたしのお父さんも、帰ってきてるわけだし。



「なぁに、莉胡、

このあいだのイケメンくんと付き合ったの?」



「……まえから好きって言われてたんだもの。

わたしの話はもういいけど、千瀬にも彼女いるのよ?おかげで毎朝別登校してるんだから」



言えば、がたんと音を立てる両親たち。

なに?と聞けば、「千瀬に彼女?」とわたしの言葉を反芻してる。……千瀬に彼女ができることが、そんなに意外だったんだろうか。モテるのに。



「千瀬って莉胡ちゃんのこと……」



「関係ないから。

莉胡に彼氏ができたのと同じでしょ。俺に彼女ができたからって、なんか文句ある?」



めんどくさそうなため息。

それ以上触れられたくなさそうな話題だと悟ったのか、両親たちは千瀬に何も聞かなかった。




──その代わりというか。

わたしをやたらと質問攻めにしてくる両親たち。けれどいつの間にかお酒が入って、わたしそっちのけで盛り上がるから、晩ご飯も早々に切り上げた。



お父さんと千瀬パパが帰ってきたことで晩ご飯は豪華だったし、食べきれないほどにある。

このまま話していてもどうしようもないと、千瀬に声をかけて部屋へ向かえば、許可なくわたしのベッドに寝転ぶ千瀬。



「もう。わたしも寝転びたい」



「食べてすぐ寝転ぶと良くないよ」



「その言葉そっくりそのまま返してもいい?」



もう、と頬をふくらませるわたしと、視線を向けることなくスマホをさわっている千瀬。

しかたなくカーペットの上に座ろうとしたら、「ん」と千瀬が身を寄せた。



……もしや、となりに寝転べと?